ブックニック2014を終えて。

遅くなってしまいましたが、「BOOK-NiCK in Kitakaruizawa 2014」にご来場くださったみなさま、あらためまして、どうもありがとうございました!

 

2日目は台風による悪天候となってしまいましたが、それでも参加者の方々のご協力のもと、2日間のプログラムを予定どおり行なうことができました。
足元の悪いなか立ち寄ってくれたお客様、最後までお付合いしてくれた関係者のみなさんに、まずは心より感謝を申し上げたいと思います。

 

 

ざっと(と言いながら長くなってしまいましたが…)2日間のことを振り返ってみたいと思います。
当日の会場風景写真とあわせて、お読みください。

 

初日は、穏やかな秋晴れのもと、ステージにはブックマルシェ、中庭にはピクニックスタイルの出店が賑やかに並びました。

ブックマルシェ・中庭のピクニックともに、出店チームは朝早くから続々集結。
長野、群馬を中心に、遠くは山梨、さらには東京・鎌倉から!
移動だけでも大変だったはずですが、さすがは普段から個性的なショップを展開されているだけあって、当日もがらんどうだった会場に、みるみる手早くブックニックのためだけの素敵なポップアップショップを作り上げてくれました。
2日間だけで崩してしまうのはもったいないくらいです。

同時に会場では、入口や中庭部分の飾り付け。葉っぱと白い鳥が揺れる、森にぴったりのオリジナルのガーランドは、今回のためにデザイナーの小林真紀子ちゃん(とそのご家族!)が手作りで一枚一枚作ってくれたものです。
(真紀子ちゃんは、告知にまつわるフライヤーやポスターにウェブサイトの制作を一手に引き受けてくれただけでなく、私たちの気づかない細かな部分のサポートや当日の撮影までを手伝ってくれた、いわばブックニックの影の司令塔です!ほんとうに感謝!)

本屋さん、古道具にクラフト、お菓子やパン屋さんまで、この日のために気持ちを込めてセレクトや準備をしてくれたことがわかり、主催であることを忘れて見惚れてしまうほど。

クラフトのお店は、簡単に参加できて記念になる小物を持ち帰ることのできるワークショップを用意してくれたので、子供たちを中心に大人気。
できた品物を嬉しそうに持ち帰るお子さんの笑顔がとても印象的でした。

分奏室という小部屋では、オープニングと同時に、accototoさんによるガーランドづくり。
こちらも次々とご家族連れが訪れて、マスキングテープを使ったカラフルでユニークなガーランドを完成させていました。その一部は、会場のディスプレイにも使わせてもらいました!
もともとaccototoさんの絵本のファンという男の子が、サインのかわりに絵を描いてもらったのをとても大切そうに抱きしめていて、可愛かったなあ。

中庭の大きな木の根元では、詩人ウチダゴウさんのインスタレーション「森と耳」。
木の幹や、地面の切り株の上や茂みのなかに不思議な巣箱が隠されていたのを、みなさんちゃんと気づいてくれたでしょうか?!
巣箱のなかにはiPod、そのiPodには、ゴウさんがこれまでに書いた作品のなかから森の風景に合うものを選び、録音した音声が聴けるようになっていました。
あえてちょっぴりわかりにくく、見つける歓びを感じてもらおうと企みましたが、こういう仕掛けを目ざとく見つけるのはやっぱりお子さんのほうが早かったようです。つられて大人たちも恐る恐る(!)イヤホンを耳に。
賑やかな会場のなかで、不意に耳から飛び込んでくる言葉の連なりは、周囲とのギャップや「ひとりでいる」ことをかえって強く意識することにもなり、想像したよりも不思議と集中できて、面白い体験でした。
気に入った詩があれば、ゴウさんがその場でライティング。私は「森の熊」をリクエストしましたよ!
今回のように、詩や、言葉や、本や、文学というものを、それまでと違った角度から楽しんでみる仕掛けづくりを、ブックニックではこれからも大事にしていきたいと思っています。
(ゴウさん、いろいろな準備、ありがとうございました!)

午後に行なわれた、松家仁之さんのトークイベント。早くからご予約いただき、楽しみにされていた方も多かった、今回のブックニックの目玉企画のひとつです。
「本からはじまる」と題して、まさに本をかたちづくる紙や文字の配列や装幀のことから、本づくりの現場のウラ話、さらには松家さんお薦めの本のご紹介や、今後の出版予定まで。
編集者として、作家として、長年「本の現場」に携わってこられた松家さんだからこその貴重なお話の数々に、“本好き”のお客さんは食い入るように聴き入っていました。
予定していた一時間では足りず、最後は少し駆け足になってしまったことがもったいなかったのですが、松家さんは、質疑応答にも、最後のサイン会でも、お客様ひとりひとりと丁寧に対応してくださいました。
お客様のなかにも松家さんの著作の大ファンという方がたくさんいらして、興奮がこちらにも伝わってきました!
忙しいスケジュールの合間に駆けつけてくださった松家さん、担当の須貝さん、本当にありがとうございました。
またぜひこのような機会を設けることができたら嬉しく思います。

16時のクローズの時間まで、お客さんは途切れなく。
昨年お会いした方や、いつも麦小舎に来てくれる方の顔もたくさん見えて、お話をしているうちに、朝までの緊張もどこへやら。
自分自身もすっかりこの場を楽しんでいることに気づきました。

初日終了後、お泊まりや近隣の参加者の方々との軽い懇親会を会場で行ないました。
昨年までは余裕がなかったため、今回初めてのことでしたが、顔は知っていてもなかなか話したことがないメンバーのささやかな交流の場となり、なにより楽しかったので、次回以降も行なえたらいいなと考えています。

 

そして2日目は、前述のとおり、朝から雨。
予報ではもう少し遅くから降るような感じだったので、がっかり、泣きたい気持ちでした。
おまけに気温もがくんと下がって。
それでも出店の方は準備をして駆けつけてくれたので、やれるところまでやってみましょう、と。

ブックニックの会場である北軽井沢ミュージックホールは、屋内の広いステージと中庭には渡り廊下があるため、小雨程度であれば問題なく開催が可能です。
しかし今回は台風の接近に伴う強雨。特に、中庭出店の方には、跳ね返りなどもあり、本当にご不便をおかけしてしまいました。
そして、全体的な客足もやはりお天気に大きく左右されてしまいました。

それでも、大雨のなか、「やっているなら来てみたよ!」と覗きに来てくれたお客さんが意外にも多く、ありがたくてまた泣きそうに…(笑)。
雨だから予定していた登山ができず、予定変更でこちらに来て、山岳系の本をあれこれ買っていってくれた、というこんな場所ならではのケースも。
一度来てくれた方の滞在時間は、雨のおかげで逆に長くなっていたかもしれません。

この日に予定していた「ブクブク交換」は、予約の方が雨で来られなくなり不開催となり、とても残念、かつ共催の「うす沢」さんには申し訳なかったのですが、うす沢さんにも笑顔で「また来年やりましょう!」と逆に励ましてもらってしまいました。

雨は最後まで止まず、冷え込みも厳しい一日でしたが、あちらこちらでお互いを案じ合ったり、こうとなったらこの時間を思いきり楽しもう!と皆さんが気持ちを切り替えてくれたりしたことで、出店側とお客さんとの枠を超えた連帯感が生まれ、各ブースでもお話の輪がさらに広がったり親密になっていたように思えます。
最後の搬出は、出店者の方にとりわけ厳しい状況を強いることとなってしまったのですが、ここでもまた皆さんが協力しあってくれているのを見て、普通に、滞りなく終えたイベントであったなら気づかなかったであろう、当たり前だけれど大切なもの、もしかしたらイベントを行うなかでいちばん大事にすべきこと、にあらためて気づくことができました。
これも台風のおかげかな!?(負け惜しみもちょっぴり。)

いったん会場をリセットしたあとに、いよいよブックニックのフィナーレ、ギタリスト・伊藤ゴローさんのライブの始まりです。
ゴローさんとサポートピアノの沢渡さんも、大雨のなか新幹線とレンタカーで北軽井沢にやってきてくださいました。
東京との気温差に驚かれ、リハーサル中もなかなか手が動かなかったり、また屋根を打つ雨の音が大きくてボリュームの調整に時間がかかり、私たちもハラハラ。
音響係として、地元の音楽メンバーで普段からミュージックホールに詳しいSさんHさんがサポートとして手伝いに入ってくれたので、お二人のおかげもあってどうにかスタンバイ完了。
ゴローさんからも「だいじょうぶ、いい会場ですね」と言ってもらえて初めてホッとしました。

会場は、ゴローさんとグランドピアノを弧を描いて囲むようなセッティングにし、町はずれのサーカス(?)のような電球を灯しました。昼間とはがらっと違う雰囲気に。

ライブ本番。遠方からのお申込だった方も無事到着。ホールの屋根に打ち付ける雨の音がいっそう強くなるなか、静かにギターとピアノが鳴り始めて…。

この先は、あの時間を共有できたみなさんとの秘密の宝物にしましょう。というよりも、文字であらわすことなどできません。
ひとつだけ言えるとするなら、音楽も、読書も、すばらしい体験はすべてが一期一会。
短い人生のなかで触れ合えるものはごくごく一部でしかありませんが、でもそれは同時に、それぞれの人が出会うべくして出会ったものだと言えるのではないでしょうか。

あの日、あの場所で、ゴローさんの奏でる音楽をライブで吸収できたことは、1冊の忘れられない本と出会うのと同じで、これから先のふとした場面で、目には見えない良い気配となって、自分を助けてくれるような気がします。

 

まだまだ拾い上げられていないことばかりですが、個人的なブックニック2日間の記録まとめです。

 

今年、いちばん印象的だったのは、人が本を読む姿は美しいんだなあ、ということ。
ページに顔を埋めるように読むひと。ぶつぶつ声に出して読むひと。座り込んで胡座をかきながら読むひと。
会場が靴を脱いで上がるスタイルであることもあって、ふだんの読書の格好に近い「素」の姿を垣間見れてしまったのだと思うのですが、どの方も本を手にする姿が、なんだかとても愛おしくて。
本という、紙と活字と絵や写真などで出来たシンプルな物体が、こんなにも人を無心にさせたり、夢中にさせたりする。ページを開きさえすれば、いつでももうひとつの世界に飛び込める。
松家さんも仰っていましたが、本の未来はまだまだ可能性に溢れているのです。
そんなすばらしい「本」と出会うきっかけのひとつに、このブックニックがなれたなら、これ以上、望むことはないなあという気がしています。

みなさん、どんな一冊に出会えたのでしょう。

 

ブックニックの主催は、私たち麦小舎のふたりではありますが、私たちだけで出来得たことなどほんの1mmもありません。
すべては、関わってくれたみなさま、ご来場のお客さま、また遠くで応援してくれたみなさんの力によるものです。
この場を借りて、ほんとうにありがとうございました。

 

各出店者さんは、それぞれの場所で精力的な活動をされています。
気になったお店があれば、ぜひふだんの活動もチェックしてみてくださいね。

 

山の麓の小さなイベントではありますが、年々、楽しみにしてくれる方も増えているようです。
今年、うまくできたこともありますが、まだまだやり残してしまったことも、たくさんあります。
来年以降も、手作りのサイズは残しつつ、愉快な仲間たちと一緒に、また新しい愉しみを用意して、みなさんを秋の北軽井沢にご招待したいと思います!

 

また秋の森でお会いしましょう!

どうもありがとうございました。

 

2014年10月10日
麦小舎 藤野由貴男・麻子

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