「Book-nick in Kitakaruizawa 2012」を振り返って【vol.3】

 
 
10月19日、麦小舎では製本ワークショップ森のスケッチ帖をつくるを開催しました。

 
講師は、東京からわざわざ来ていただいた「空想製本屋」こと、本間あずささん。
製本というお仕事に対する誠実な姿勢を、以前から人づてに聞いたりブログなどで拝見していて、今回ぜひお招きしたいなぁとお願いしてみたところ快諾していただきました。

 
参加してくださったのは、高崎や伊勢崎など群馬からの方と、長野の東御からの方。
片道けっこうな距離があるのに、この日を目指して集まっていただいて、ありがたいことです。

今回のワークショップ。ただ、机を前に作業をするだけではもったいない。この季節、この場所だからこその愉しみを加えたいですね、と事前に本間さんとご相談。
簡単な自己紹介などをすませたら、まず、スケッチ道具とまっさらな紙を持って、皆さんにはお外に出かけてもらいます。
森で、草原で、木の葉や実を拾ったり、風景をスケッチしたり。
この日もとても気持ちのよい秋晴れのスケッチ日和!
色づいた葉や、浅間山、庭でまどろむ猫たちなどを描いたり、森の落とし物を拾い集めながら、ゆっくりと1時間ほどを過ごしました。

テーブルに戻ってからは、それらバラバラの状態の一枚一枚を、きちんとした製本の技術を用いて綴じていきます。
使用するのはシンプルに針と糸のみですが、針を刺す順番を間違えないように、重なりがずれないように、細心の注意をはらいながらの作業のため、みなさん真剣そのもの。
私は詳しいところまで説明を聞けていないのですが、リンクステッチという縢りの製法を使って、10枚ほどの画用紙と裏表の表紙をリボンで綴じ、一冊の本の形になるところまで皆さんで仕上げました。
今回は扱いやすい柔らかい紙を使いましたが、基本さえ憶えてしまえば、分厚い紙でしっかりとした本の装幀にも活かせるのだそうです。

今日という日に出会った風景やモノを、自分の手で一冊の本というカタチにまで仕立てられるというのは、なかなか味わえない経験だと思います。
WS後も、お茶を飲みながら、製本についての質問を本間さんに答えてもらったり、終始なごやかで穏やかに過ぎた3時間。

(この日、白一点の参加者だった方が、あとからこの日の内容をブログにまとめてくださっていました。ぜひこちらもご覧になってみてください。)

 
買う、読む、書く、だけではない、「つくる」という本との関わり方。

紙の本が衰退していくといわれるこの時代に、”身体的に”本を楽しむという行為は、もしかしたらこれまで以上に私たちにとって意義のあるものになっていくのかもしれません。

次回はぜひ私自身が挑戦してみたいと思っています。
空想製本屋・本間さん、参加してくださった皆さん、はるばるありがとうございました。

 
 
 
そしてブックニックもいよいよ最後の週末2日間へ。

 
10月20日・21日限定で行なわれたイベントの一つが東北銘菓フェス
東京・谷中で行なわれる東北の銘菓とお茶を楽しめるイベントの出張版を麦小舎にて開催しました。

協力してくださったのは、本家フェス発起人のイラストレーター・小関祥子さん。
土曜日はこの日のために東京から日帰りで(お伴にフェスのゆるキャラ!?お手製の”めいかちゃん”を連れて)やってきてくれました。

この日、ご用意したお菓子は3種類。岩手の亀の子せんべい、宮城の支倉焼、そして福島出身の相方にも馴染み深い焼き菓子「檸檬(れも)」。

これらに、岩手県沿岸南部・気仙地方に古くから伝わる「気仙茶」の再興に携わる「焙茶工房しゃおしゃん」の気仙茶か、麦小舎オリジナル・トンビコーヒーの珈琲どちらかをお付けして。
さらに、東北銘菓の魅力を推薦人の言葉で紹介するフェス限定の冊子「東北銘菓マップ」をセットにしたものを、カフェメニューとして提供しました。

 
当日は、フェスメニューのことを楽しみに来ていただいたお客様から、この場で知ってご注文してくれた方までさまざま。
お話を聞いてみると、東北にルーツがあって「○○というお菓子も美味しいんですよ」とお薦めしてもらったり、「以前、旅したときにこの○○に出会いました」という思い出がおありだったり、お菓子を通じて、東北との繋がりのお話がたくさん!
それも皆さん、お菓子を頬張りながら笑顔でお話してくれたことが、提供するこちらとしてもとても嬉しくて。
私たちは単に仲介役でしかないのですが、自分で作ったものが喜ばれたような嬉しさがあったり。

 
お菓子を食べているときに悲しんだり怒ったりしているひとはあまりいません。
誰もがほっとひと息ついて安らぎを感じる「おやつの時間」というものを入口にして、あらためて今、東北のことを考えてみること。

それは決して直接的な支援でもなんでもないけれど、そこからもしかして東北を実際に訪ねるきっかけになったり、いずれ「ああ、あのときの!」と思い返して懐かしくなったり、そんなふうなゆっくりと広がる波紋を生む小石みたいな機会になれればいいな、という思いがあったのですが、それがお客様に届いたとしたら幸せなことです。

 
当日は少しバタバタしてしまって、一人一人のお客様に丁寧にご説明できなかったことが残念ですが、この「東北銘菓フェス」は、また本家・谷中で来月の開催が決まっています!
お菓子もたくさんの種類のなかから選ぶことができますので、今回来られなかった方はぜひこちらに足を運んでみてください。(詳細はこちら

 
最後に、今回お出しした「気仙茶」について、もう少しだけご紹介させてください。

気仙茶というお茶があること自体、私も小関さんに紹介していただくまで知りませんでした。
それもそのはず、栽培の歴史は古く江戸時代まで遡るものの、その後大きく普及することはなくほとんどが自家用として作られる程度。
そのお茶の美味しさに着目して、2005年から再び長く摘まれていなかったお茶の木を摘み、緑茶や烏龍茶として販売をされているのが、岩手県雫石「しゃおしゃん」の前田さんです。
今回前田さんから直接送っていただいたお茶は、実は8年程前に収穫され、寝かされていた緑茶を焙煎して整えたものです。
緑茶といえば新茶で飲むイメージが強く、焙煎と聞いて「どういうものなんだろう?」と思っていたのですが、試飲させていただくと、たしかに緑茶のフルーティーな爽やかさがあるものの、同時に熟成した香ばしい甘みが広がって、味わい深いのにとても飲みやすい。
少しプーアール茶などの中国茶みたいな雰囲気があるのですが、だからといってかしこまって頂くものでもなく、普段の食卓のお茶としておおらかに飲みたくなる気取りのなさ。
東北にこんなお茶があったのかぁ、ととても意外でした。
こうしたお茶の存在を知るのが震災を機に、というのは、少し皮肉というか、申し訳ないようなうしろめたさを感じてもしまうのですが、前田さんのように、地域に伝わる文化を地道に再興していこうとがんばる人と出会えることは、それだけでわくわくするような嬉しさを感じられること。
お茶を送って頂いた時に添えられていたお手紙にも、前田さんという方の実直なお人柄が滲み出ているようで、じわっと心が温まりました。
前田さんのお茶に対する思いについては、「焙茶工房しゃおしゃん」のHPをご覧ください。

 
 
【ここでおしらせ】

東北銘菓フェスはこの2日間で終了しましたが、送っていただいた気仙緑茶がまだもう少し手元にあります。
ですので、麦小舎の残り1ヶ月の営業期間中も、カフェメニューのひとつとしてご提供させて頂こうと思います。
お茶に合うようなおやつのメニューも考えてみますね!

 
 



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