「Book-nick in Kitakaruizawa 2012」を振り返って【vol.2】
10月14日には、麦小舎で「a day for book, music and picinic !!」。
事前に予約いただいた方だけの、秘密のピクニック開催日は、すばらしい秋晴れに恵まれたまさにピクニック日和の一日となりました。
まず第一部は、東京から編集者の山村光春さんを、軽井沢から絵本作家「accototo」のお二人を招いて、2つのワークショップを同時開催。
山村班(!刑事みたいですね)は、サンルームのテーブルを囲んで、「編集」をテーマに、言葉で伝えること、表現することについてのお話を。
山村さんの巧妙なトークのおかげもあり、途中から参加者の皆さんの顔にどんどん熱が加わっていくのがわかりました。
accototoこと福田班は、「絵本をつくろう」というテーマ。
白い画用紙を配られ、絵本をつくる際の絵コンテづくりから、実際にページを埋めていく作業までを、限られた時間のなかにも関わらず、皆さん熱心に集中して取り組んでいました。
2時間というワークショップはあっという間に過ぎて、さあ、お昼の時間です。
ランチは、軽井沢の「ありんこ菓子店」ありさんによるピクニックバスケット。
お野菜やお豆、チーズなどボリュームたっぷりの温かいキッシュ、ホロホロサクサクのスコーン、焼き菓子の詰め合わせ、そしてこの日のために手作りしてくれた「ありんこ本」まで!
見た目にも、味わっても、幸せな気持ちになるようなこのスペシャルランチ製作のために、ありさんは事前に何度も試作を重ねてくれました。
その成果あって、ボックスの蓋を開けたときの皆さんのキラキラした顔といったら!
麦小舎の庭の思い思いの好きな場所で、ゆっくりとお食事を楽しんでいただきました。
初めて会った参加者の方同士も、美味しいランチをはさんで、お話に花を咲かせていました。
そして午後の部は、お待ちかね、tico moonのお二人によるスペシャルライブを、薪ストーブのついた店内で。
毎年秋がくるたびにライブを行わせてもらって、今年で5回目。もはや麦小舎の秋に欠かせない大切な節目のようなイベントです。
ポロンと弦が弾かれて、やさしい音色が小屋中に広がると、室内の空気がとろんと柔らかくほどけます。
途中、山村さんとのトークでは、作品のタイトルにまつわる内緒話から、山村さんの靴下が左右反対であることへの影山さんのツッコミまで、初対面とは思えない笑いを誘うやりとりがあったり(3人ともさすがは人を楽しませるプロですね)。
ライブではできたばかりのまだ名もない新曲も聴かせていただきました。
アンコールに2曲も応えていただき、気づけば日も傾き始める時間。
6時間を超える長い一日にお付き合いしてくれた参加者の方々と、最後に少しゆっくりお話をさせていただきましたが、みなさん、今日という日をゆったりと楽しんでくださった様子。
こんなピクニックがあったらいいな、というものを盛り込んで、少し欲張りすぎたかな、と不安もあったのですが、温かい反応にこちらまで嬉しい気持ちになりました。
(なかには遠く広島から駆けつけてくれた方もいてびっくりしました!)
秘密のピクニック、いずれまたこっそりと開催されるかもしれません。
そのときにまたお会いしましょう*
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10月15日、麦小舎には谷川俊太郎さんがいらっしゃいました!
ブックニックを開催するにあたって、どうしても叶えたかった夢のひとつ、それが谷川さんにここでお話をしていただくということでした。
夏の間に谷川さんがお店にいらして、「いいですよ、やりましょう」と言ってくださったときの喜びは、今でも忘れられません。
その嬉しさは私たちだけではなかったようで、9月に行った参加予約申し込みでは、受付から1時間足らずでお席は定員いっぱいに。
その後もたくさんのお問い合わせをいただきましたが、小さな店舗が会場ゆえお断りせざるを得ず、ご迷惑をおかけいたしました。
さらに、受付を終了したあとに、トークのお話相手として、谷川さんと同じ北軽井沢「大学村別荘地」の住人として親交もある作家・長嶋有さんが名乗りを上げてくださって、さらに贅沢なイベントになってしまい、私たちも、楽しみと不安が混ぜこぜになったハラハラどきどき感を抱えながら当日を迎えることになったのでした。
この日も、穏やかな秋晴れとなり、少し早めに到着された谷川さんは、お庭でチャイを飲みながら(チャイがお好きなようでいつも注文されます)ひとやすみ。
そこに有さんも到着されましたが、この日の内容についての打合せのようなものはいっさい無し!
こうしたイベントに不慣れな私たちがしどろもどろしている間に、さらっと「で、有くんはいつからこっち来てるんだっけ?」の問いかけから徐にお話会スタート!
それから終了までの1時間半ほどの時間のことは、実はほとんど頭が真っ白になってしまって記憶がありません(苦笑)。
掛け合いを続けるお二人の絶妙なトークと間合いは途切れることなく、初めは緊張していたお客さまもどんどん前のめりに引き込まれていき、そのうち大きな笑い声も巻き起こるまでに。
山暮らしのこと。気候のこと。軽便鉄道のこと。初恋の女の子のこと。若いころの旅のこと。好きな車のこと。物を書くということ。そして、骨董屋さんである有さんのお父さんニコニコ堂さんのこと。
有さんが巧みに話題を引き出してくれたかと思うと、逆に谷川さんからの質問攻めにあったり。お二人のバランスがちょうどよくかみ合って、こじんまりした場の空気とも相まって、どちらかの山の家に少人数で遊びにいったかのような、親密で穏やかな雰囲気の漂う和やかなお話会になりました。
後半には、山で創作された詩の原稿を、初期、中期、後期のもの、と説明を加えた上で、朗読してくださいました。
これまで活字で頭にインプットされていた言葉の連なりが、声(それもご本人の!)という音のかたちで耳から飛び込んでくる体験は、私自身あまり経験がなかっただけに、とても新鮮で、体の中にビリビリと電流が走るような気持ちになりました。
個人的には、それまで「あの人」と書いていた女性を指す表記を、岸田衿子さんと出会って衿子さんのことを指し表すようになってから、ひらがなでの「あのひと」に変わった、というエピソードが、おふたりの仲睦まじさをあらわしているようで、微笑ましく印象に残っています。
夢うつつのような時間はあっという間に過ぎて、お話会は終了となりましたが、その後も、会場で販売した本を買われた方ひとりひとりに丁寧にサインをしてくださったり、お写真にも入って頂いたり、と、最後まで温かくお付き合いくださった谷川さん。
(打ち上げのお食事会にも参加いただき、ワインを飲みながらまたたくさんお話してくれました!)
傘寿とは思えない若々しさ。失礼を承知で書かせてもらえれば、とてもチャーミング。
誰に対しても穏やかで優しくて、若い世代との交流も厭わず好奇心旺盛。
作品はもちろんのこと、そうしたお人柄がたくさんの方から支持され、愛される理由なのだろうなぁ、と実感しました。
ぜひまた、こうしたお話会の場を作れたらいいなぁと、余韻にひたりつつ早くも夢みております。
俊太郎さん、有さん。ほんとうにありがとうございました!